作中で幾度となく叫ばれる「俺は不死身の杉本だ!」という咆哮は、読者や視聴者の胸を熱くさせる代名詞です。この異名が定着した最大の契機は、近代戦史において最も過酷な局地戦の一つとされる日露戦争の激戦地・旅順攻囲戦、とりわけ「二〇三高地の戦歴」にあります。
大日本帝国陸軍第一師団(東京)に所属していた杉本佐一は、ロシア軍の強固な要塞へ向けた無謀な突撃作戦に何度も投入されました。機関銃の掃射と砲撃の雨あられの中、所属部隊の仲間が次々と肉塊と化していく極限状態に置かれながらも、彼は銃弾を全身に受け、銃剣で肉を抉られながら敵陣に一番乗りを果たしています。常人であれば即死、あるいは戦闘不能に陥る重傷を負っても立ち上がり、敵を屠り続けたその姿から、敵味方問わず「不死身の杉本」の二つ名で呼ばれるようになりました。
彼がこれほどの生命力を誇る決定的な理由は、肉体的な頑健さ以上に「精神的な自己暗示と目的意識」にあります。杉本自身は後に、死の恐怖に飲み込まれそうになる己を奮い立たせるため、あえて「俺は不死身だ」と声に出して脳を騙していた事実を明かしています。戦友・寅次の遺志を継ぎ、その妻である梅子の眼病治療費をアメリカで稼ぐという絶対的な使命感こそが、失血死の寸前でも心臓を動かし続けた真のエネルギー源でした。