このソースの生まれ故郷は、南米アルゼンチンです。広大なパンパ(草原地帯)を有するアルゼンチンは、国民1人あたりの牛肉消費量が世界トップクラスを誇る筋金入りの肉大国。彼らが週末ごとに家族や友人を集めて開く伝統的なバーベキュー「アサード(Asado)」において、チミチュリソースはまさに魂とも呼べる存在です。
アサードでは、巨大な牛の塊肉を薪の熾火(おきび)で何時間もかけて豪快に焼き上げます。味付けの基本は粗塩のみ。焼き上がった熱々の赤身肉に、各家庭秘伝のチミチュリソースをたっぷりと回しかけて食すのがアルゼンチン流の流儀です。現地では「チミチュリのないアサードは、太陽のない昼下がりと同じだ」と例えられるほど、食卓に欠かせないインフラとして根付いています。
名前の起源には諸説あり、19世紀初頭にアルゼンチン独立戦争に関わったイギリス人兵士ジミー・カリー(Jimmy Curry)の名が現地訛りで変化したという説や、捕虜となったイギリス兵が調味料を求めて「Give me curry!(カレーをくれ)」と叫んだ言葉が転じたという説などが語り継がれています。真偽のほどは歴史の霧の中ですが、異文化のスパイス感覚と南米の牛肉文化が融合して生まれた奇跡のソースであることは間違いありません。