「普通のライブとトークだけでは、最初の1枚のチェキすら売れません。炎上してでもタイムラインに名前が載らなければ、存在していないのと同じなんです」
新宿の雑居ビルにあるライブハウスの楽屋口で、ある現役アイドルは絞り出すように語りました。地下アイドル過激化の背景と現在を読み解く上で、避けて通れないのが市場の極端な飽和状態です。日本全国で活動するライブアイドルの数は推計で1万人を超え、週末の対バンイベント(複数グループが出演する合同ライブ)では、1組あたりの持ち時間はわずか15分から20分程度に制限されます。
チケット代の大半はライブハウスや主催者に渡るため、グループの手元に残る利益は極めてわずかです。運営とメンバーを潤す唯一最大の資金源が、終演後に行われる物販、とりわけ「チェキ会」の売上です。原価わずか100円前後のインスタントフィルムが、サインと数十秒の会話をセットにすることで1枚1,500円から3,000円の高付加価値商品へと化けます。利益率は90%を超え、グループの死活を完全に握っています。
競合他社がひしめく中で客の奪い合いに勝つため、地下アイドル過激パフォーマンスの理由は「音楽的な差別化」から「刺激のインフレ」へとシフトしていきました。より近く、より際どく、より常識破りに振る舞うグループほど、短期間で熱狂的な太客(大口課金ファン)を囲い込み、SNSでの露出を稼ぐことができるという悪循環が定着してしまったのです。