この数字の凄みは、単なる身長の指定で終わらないところにある。藤子・F・不二雄は、ドラえもんの主要なスペックすべてに「129.3」という数値を徹底して刻み込んだ。悪戯心とも呼べるこの偏執的な設定は、ファンならずとも思わず唸らされる整合性を持っている。
体重は129.3キロ。身長130センチ弱の球体としては凄まじい密度だ。踏まれたら生半可な怪我では済まない。さらに胸囲も129.3センチ、つまり完全な円筒形に近い体型をしている。ネズミに遭遇してパニックになった際の逃走速度は時速129.3キロ、ジャンプ力は129.3センチ、最大馬力は129.3馬力。極め付きは製造年月日で、2112年9月3日と設定された。
漫画的ギャグとして片付けるのは簡単だ。しかし、これほど統一された数字の連鎖は、読者の脳裏に「129.3」というコードを不可逆的に焼き付けるプロパガンダのような効果を発揮した。子どもたちは数字遊びのようにスペックを暗唱し、架空のロボットを現実の物理法則の中に無理やり着地させて楽しんだのだ。