月齢表を読み解くうえで、多くの人が混同しやすいのが「上弦(じょうげん)の月」と「下弦(かげん)の月」の区別です。どちらも夜空に半円形で現れますが、その挙動と見え方には天文学的な違いがあります。
見分け方の基準は「西の地平線に沈むときに、直線の弦(平らな部分)がどちらを向いているか」です。沈む際に弦が上を向くのが上弦の月、弦が下を向いて沈むのが下弦の月と呼ばれます。空を弓に見立て、矢をつがえる弦の位置から命名された風情ある呼称です。
- 上弦の月(新月から満月へ向かう半月): 正午頃に東の空から昇り、日没後の夕方から宵にかけて南の空高くで見頃を迎えます。深夜0時頃に西の空へ沈みます。右側が白く輝いて見えるのが特徴です。
- 下弦の月(満月から新月へ向かう半月): 深夜0時頃に東の空から昇り始め、夜明けから朝方にかけて南の空に残ります。昼前の正午頃に西の空へ沈みます。左側が輝いて見えます。
明治5年に太陽暦(グレゴリオ暦)が導入されるまで、日本で1000年以上にわたり使われていた旧暦(太陰太陽暦)では、月の満ち欠けそのものが月日を決定していました。新月を迎える日を必ず「一日(ついたち=月立ち)」とし、15日は「十五夜(満月)」、月末の月が隠れる時期を「晦日(みそか=月隠り)」と呼んだのです。
旧暦時代の人々は時計を持たずとも、夜空に浮かぶ月の傾きと輝く半面の向きを見るだけで「現在は何日頃で、今夜は何時頃か」を正確に把握していました。農業における種まきや収穫、沿岸部の舟の出入港に至るまで、月の満ち欠け表は生活インフラそのものとして機能していた経緯があります。