ネット上の美文字指南や古い教本において、しばしば「筆記体は単語の頭から末尾まで絶対にペンを離さずに書くべきだ」という言説が見受けられます。しかし、これは現代の英語圏の実務において完全に誤った認識です。
アメリカやイギリスの教育現場、あるいはネイティブのビジネスパーソンが実際に書く文字(コンテンポラリー・カーシブ)を観察すると、無理な連結によって可読性が損なわれる場合、「あえて文字の間でペンを離す(リフトする)」ことが標準的なテクニックとして定着しています。
特に小文字bの結び目から次の文字へ移る際、接続が窮屈になると判断した場合は、bの結び目を右へ軽く払った段階で一度ペンを紙から離し、次の文字を通常の位置から書き始めても何ら問題ありません。これは書道でいう「気脈(線のつながり)」が通じていれば、物理的な線が途切れていても一連の流麗な筆致として認識されるのと同様の原理です。「一筆書きの呪縛」を解くことこそ、洗練された大人の筆記体への第一歩と言えます。