ネット空間や一部のコミュニティでは依然として「医療用麻薬を使うと意識が朦朧として廃人になる」「命を縮めて早く死ぬことになる」といった根強い風評が散見されます。しかし、これらの言説は薬理学的根拠を完全に欠いた誤解に過ぎません。
臨床研究において明らかにされている医療用麻薬の真実として、激しい痛みが生じている生体に対して適切に用量を調整して投与されたオピオイドは、精神的依存(いわゆる薬物中毒)を引き起こす脳内報酬系を刺激しません。痛みシグナルを打ち消す受容体に選択的に作用するため、痛みが消えるとともに身体の極度な緊張や消耗が劇的に改善されます。
厚生労働省および日本緩和医療学会の臨床報告によると、早期から適切な緩和ケアを導入し痛みをコントロールした終末期患者は、痛みを我慢し続けた患者群と比較して生活の質(QOL)が向上するだけでなく、生存期間が同等またはむしろ延長したというデータが複数報告されています。痛みに苛まれて体力を消耗する状態こそが生命活動を急速に衰弱させる要因であり、医療用麻薬は命を削る毒ではなく、命の質と残された時間を守るための不可欠な医療ツールです。