「マイル」という言葉をめぐって最も混同されやすいのが、陸上用の「陸マイル(国際マイル)」と、海洋・航空分野で使われる「海里(ノーティカルマイル=nm / M)」の存在です。同じ「マイル」という呼称でありながら、両者は全く異なる基準によって定義されています。
陸マイルが約1.609kmであるのに対し、1海里は正確に「1.852キロメートル(1,852メートル)」と定められています。陸マイルよりも海里のほうが約243メートル長い計算です。
なぜ海や空ではわざわざ異なる「海里」を使用するのでしょうか。その理由は、天文学と航海術の歴史的必然性にあります。広大な大海原には目印となる道路や建物が存在しないため、航海士たちは海図上に引かれた「地球の緯度・経度」を頼りに船を進めてきました。そこで、「地球の緯度1分(1度の60分の1)に相当する子午線弧の長さ」を基準として作られた単位が海里なのです。
さらに、船舶や航空機のスピードを表す「ノット(knot / kt)」は、「1時間に1海里進む速さ」を意味します。つまり、時速1ノット=時速1.852kmとなります。海図上の緯度目盛りをコンパス(仕切り器具)で測るだけでそのまま距離と航行時間が割り出せるため、全地球測位システム(GPS)が極めて高度化した現代においても、国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)の公式規格として海里とノットが世界標準であり続けています。