観客が最も息を呑み、鑑賞後も長く議論を呼んでいる核心が「最終的に子供は交換されたのか」という疑問です。物語の終盤、野々宮家と斎木家は「夏休みが終わったら子供を元に戻す(交換する)」という取り決めを交わしていました。野々宮家には血のつながった実子・琉晴(黄升炫)が、斎木家には良多が6年間育てた慶多(二宮慶多)が移り住み、互いの生活を始めます。
しかし、エリート意識に囚われていた良多は、カメラの中に残された「慶多が日常の中で密かに撮影していた父の姿」を発見します。ピントのぼやけた自分の寝顔や、机に向かう後ろ姿。そこには、良多がこれまで気付かなかった「慶多から自分に向けられていた無償の愛」が焼き付けられていました。涙を流した良多は琉晴を車に乗せ、群馬にある斎木家へと向かいます。
斎木家に到着した良多の姿を見た慶多は、自分を捨てたと思い込み、裏の土手へと走り去ります。追いかける良多、逃げる慶多。この土手のシークエンスを経て、良多は「パパはな、パパじゃなかったんだよ。でもな、この6年間はパパだったんだ」と告白し、涙を流しながら慶多を強く抱きしめます。そして一行は斎木家の店内へと足を踏み入れ、大人4人と子供2人が一つの空間に集まったところで映画は幕を閉じます。
結論として、作中では「子供を完全に交換した」とも「元の生活に完全に戻した」とも明言していません。是枝監督が選んだのは、血縁か時間かの二者択一を断ち切り、二つの家族が互いを行き来しながら関係性を紡ぎ直していく道でした。単にどちらかの家庭に子供を押し込めるのではなく、2人の父親と2人の母親が、慶多と琉晴という2人の息子を共に見守り育てるという、新しい家族の枠組みを受け入れた決断といえます。