カカオ分が大きく、脂肪分であるカカオバターが31%以上含まれる「クーベルチュール・チョコレート」は、プロ並みの本格的な味わいを実現する一方で、極めてデリケートな性質を持つ。市販の板チョコレートに比べて融点が低く、温度変化に極めて敏感だ。
一般的な製菓レシピをそのままクーベルチュールに適用すると、分離のリスクが跳ね上がる。成功の鍵を握るのが、刻み方の精度と「フレーク添加法(シード法)」だ。包丁で細かく均一に刻んだチョコの3分の2を湯煎で溶かし、残りの3分の1を後から投入して溶かし込むことで、シード(種結晶)となり、面倒な冷却・再加熱の手順を短縮しながら完璧なテンパリング状態を作り出せる。クーベルチュール特有のシルクのような光沢と、パリッとした軽快な食感は、この丁寧なアプローチによってのみ生まれる。