神戸市民病院機構の病院再編において、地域社会で激しい議論を巻き起こしたのが神戸市立西市民病院の移転建設計画です。JR・神戸市営地下鉄が乗り入れる「新長田駅」南側の若松公園隣接地への移転新築工事が進められており、地域の医療勢力図を大きく塗り替えようとしています。
地域住民の間で「なぜ慣れ親しんだ長田区一番町から動かすのか」という戸惑いの声が上がった背景には、通院利便性の変化に対する不安がありました。しかし、移転に踏み切った最大の理由は、既存施設の物理的限界にあります。1970年代に竣工した現病棟は老朽化が著しく、耐震改修を重ねてきたものの、最新の高度医療機器を収容するスペースや感染症専用病床の恒久的な確保が困難な構造となっていました。
さらに決定打となったのが防災拠点の再整備です。南海トラフ巨大地震を見据えた際、従来の立地では周辺道路の狭隘さや液状化・浸水ハザードへの懸念を払拭しきれず、広域避難拠点に隣接する新長田駅南地区への進出が不可欠と判断されました。新病院は免震構造を備え、自家発電装置による72時間以上の稼働維持など、災害拠点病院としての機能を大幅に底上げする設計となっています。