純日本人でも目の色素が薄い理由とは?遺伝の真相と眩しさのリスク

純日本人でも目の色素が薄い理由とは?遺伝の真相と眩しさのリスク

純日本人でも目の色素が薄い理由とは?遺伝の真相と眩しさのリスクとはどのようなものなのか? 背景や要点を簡潔に解説します。

「両親も祖父母も代々日本生まれなのに、なぜ自分だけ目が茶色いのか」という疑問に対し、生物学的な明確な回答が存在します。鍵を握っているのは、角膜と水晶体の間に位置して瞳孔の大きさを調節する薄い膜組織「虹彩(こうさい)」と、そこに沈着するメラニン色素の量です。

人間の虹彩に含まれるメラニンには、黒から濃褐色を呈する「ユーメラニン(真メラニン)」と、黄から赤褐色を呈する「フェオメラニン」の2種類が存在します。瞳の色は、虹彩の最前層である前面境界層および虹彩ストローマ(実質)にどれだけのユーメラニンが存在するかによって決定づけられます。黒人や一般的な日本人ではユーメラニンが緻密に蓄積されているため光が吸収されて濃い茶褐色に見えますが、このメラニン合成量が遺伝的に少ない場合、深層からのレイリー散乱(微粒子によって波長の短い光が散乱される物理現象)が加わり、明るいヘーゼルや淡いアンバー、黄色がかったライトブラウンとして知覚されることになります。

人類学・法医学の分野で広く使われる「マルタン・シュルツ式色見本スケール」では、人間の瞳は濃褐色から明青色まで大きく24種類に分類されます。日本人の大半は1番から4番前後のダークブラウンに集中していますが、古くからの生体調査によると、明褐色(スケール上の21番などに該当)を持つ日本人は約数パーセントの割合で定常的に存在しており、決して極めて異常な突然変異ではありません。

かつて学校の生物の授業では、瞳の色はメンデルの優性・劣性遺伝(顕性・潜性遺伝)の単一遺伝子で説明されていましたが、近年のゲノム解析により、実際には染色体上の複数の遺伝子領域が関与する「多因子ポリジェニック遺伝」であることが判明しています。特に第15染色体に位置するOCA2遺伝子とその発現を制御するHERC2遺伝子のイントロン領域における一塩基多型(SNP)の組み合わせが、メラニン合成酵素の働きを左右します。両親の瞳の色が濃い黒褐色であっても、両親が潜在的に保持していたメラニン合成量を穏やかに抑える遺伝子変異が子供に受け継がれることで、純日本人の家系から透き通った茶色い瞳を持つ子が誕生する工学的・生化学的条件が整うわけです。

さらに地理的・集団遺伝学的な背景も見逃せません。日本列島におけるフィールドワーク調査では、日照時間が比較的短く雲に覆われやすい東北日本海側の地域や、古代の南方系海洋民族(縄文人)の遺伝的痕跡を色濃く残す九州・沖縄地方において、明るい色調の瞳を持つ個体の発現率が他地域よりも高い傾向が確認されています。過度な紫外線から組織を守る必要性が低かった環境適応、あるいは先祖代々の集団的孤立と交配の歴史が、現代の日本人に多彩な瞳のグラデーションをもたらしています。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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