この「歪んだ正義」の心理を鮮烈かつ精密に描いた金字塔といえば、集英社が刊行した大ヒット漫画『デスノート』だろう。主人公である夜神月は、卓越した頭脳と強固な倫理観を持つ極めて真面目な青年であった。しかし、名前を書くだけで人間を死に至らしめるノートを手にしたことで、彼の純粋な正義感は劇的な変貌を遂げる。
極限のサスペンス構造の中で描かれるのは、悪人を淘汰し「理想の新世界」を創り上げようとする使命感が、やがて自身に異を唱える無辜の人間すら排除する独裁者的な狂気へと成り果てるプロセスだ。夜神月の軌跡は、どれほど高潔な理念であっても、チェック&バランスを欠いた自己正義は容易に邪悪な暴力へと反転し得るという事実を突きつけている。