いまやX(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどのタイムラインで、「世界線」というフレーズを見ない日はない。ネットスラングとしての「世界線」は、大半が「パラレルワールド(並行世界)」や「もしもの可能性、別の選択肢を選んだ現実」と同義で使われている。たとえば、「あの時告白していれば付き合っていた世界線」「推しと遭遇できた世界線」といった具合だ。
しかし、原義に立ち返ると、この使い方は厳密には誤用に近い。日常会話で使う分にはコミュニケーションの潤滑油として機能しているものの、概念の本質を理解しておくことは、過剰な言葉のインフレに惑わされないためにも極めて有用だ。日常で飛び交うスラングの背後には、物理学の厳密なロジックと、それを大胆に翻案した創作物の歴史が横たわっている。