日本最古の物語とされる『竹取物語』。月に帰る美しい姫と、彼女に翻弄される男たちの寓話は、これまで幾度となく映像化されてきた。しかし本作が試みるのは、誰も踏み込まなかった伝承の暗部へのダイブだ。
圧倒的な映像美で描かれるのは、優雅な平安絵巻ではない。血と泥、そして底知れぬ人間のエゴが渦巻くダークファンタジーの地平である。夜空に浮かぶ月の光は救済ではなく、逃れられない呪縛として登場人物たちを照らし出す。伝承に潜む残酷さを現代的な倫理観と衝突させることで、観客の倫理観そのものを揺さぶるサイコサスペンスの構造が見事に組み上げられた。