70年代後半から80年代にかけて、日本映画界の潮流を大きく変えた角川映画の躍進において、松田優作は不可欠のアイコンだった。『人間の証明』や『蘇える金狼』、『野獣死すべし』などで見せた徹底的な肉体改造とシャープなアクションは、観客の度肝を抜いた。
しかし、彼の真価はアクションだけに留まらなかった。森田芳光監督による『家族ゲーム』で魅せた吉本勝という家庭教師役の怪演は、彼のキャリアにおける大きな転換点となった。整然と横一列に並ぶ食卓のシーンで見せた独特の間と不気味なユーモア。アクションスターとしての顔を自ら脱ぎ捨て、表現者としてさらなる高みへと脱皮を遂げたこの作品は、彼が単なる人気俳優ではなく、日本映画史に残る稀代の異能であったことを証明している。