映画『ちはやふる -結び-』において、観客の感情を最も激しく揺さぶったのが、太一がかるた部を去る決断を下し、部室で千早に長年の想いを告げるシーンです。
新に対する絶対的な才能の差を痛感し、「どれだけ努力しても届かない場所がある」という絶望に打ちひしがれた太一。彼はかるた部を退部することを千早に告げます。動揺する千早に対し、太一は静かに、しかし胸の奥から絞り出すように言葉を紡ぎます。
「千早、好きだ」
この告白の瞬間、野村周平が見せた表情は、恋愛感情の成就を期待するものではなく、「自分の弱さと決別し、前に進むための痛切な自己解放」でした。千早が驚きのあまり言葉を失い、返答に詰まる中で、太一は無理に微笑みながら立ち去ります。
原作漫画ではこの後、さらに長く過酷な太一の精神的放浪が描かれますが、映画版『結び』では、名人・周防久彦(賀来賢人)との出会いを経て、太一が「誰かのためではなく、自分の意志でかるたを取る」という境地に達する姿が見事に凝縮されました。全国大会の決勝戦、再び瑞沢高校の仲間のもとへ駆けつけた太一の姿に、映画館のあちこちからすすり泣く声が漏れたのは記憶に新しいところです。