生理的な嫌悪感を抱く人が大半であるはずの廃棄物が、なぜ一部の層にとって金銭を支払う価値を持つのか。購入者の動機を深掘りすると、主に3つの歪んだ欲求が浮かび上がってきます。
1つ目は、特定の身体分泌物や痕跡に対するフェティシズムです。着用者の唾液、呼気に含まれる匂い、付着したファンデーションや口紅の痕跡に対して性的な興奮を覚える嗜好層が存在します。かつて平成期に社会問題となった「使用済み下着(ブルセラ)ブーム」の対象が、手軽に入手可能な日用品へとスライドした形といえます。
2つ目は、他者のプライベート領域への侵入欲求と疑似的な支配感です。見知らぬ他人が1日中肌に密着させていた布製品を所有することで、「相手の生活空間に入り込んだ」という歪んだ全能感を得ようとします。そこには、対面での人間関係を構築できない孤独感の裏返しとして、物理的な物体を介して一方的な支配関係を結ぼうとする心理が働いています。
3つ目は、最も危険なストーキングおよび個人情報の収集目的です。「マスクを売ってほしい」と接触してくる購入者の中には、性的な欲求以上に、相手のリアルな生活圏やアイデンティティを暴くことに快感を覚える執着者が存在します。送られてきた現物を徹底的に分析し、売り手の素性を突き止めるための「情報源」として購入しているケースが報告されています。