一口かじると、まずクラスト(皮)の力強い歯ごたえに驚かされる。続いてやってくるのは、みずみずしく吸い付くようなクラム(中身)の食感だ。一般的な食パンやバゲットの発酵時間が数時間から長くても半日程度であるのに対し、ここでは最低でも72時間の低温長時間発酵を貫く。
時間をかける理由は明白だ。酵母と乳酸菌が小麦のデンプンやタンパク質を極限まで分解し、複雑なアミノ酸へと変化させる。これにより、砂糖や油脂に頼らずとも、小麦本来が持つ自然な甘みと旨味が引き出されるのだ。「急がせないこと。パンが自ら育つ時間を待つのが私たちの仕事です」。仕込みを担当する職人はそう語る。