インターネット上では時折、「トルコアイスは絶滅寸前」「本物のサーレップは日本に存在しない」といった極端な言説が見受けられます。この情報の背景には、トルコ国内における環境保全と法規制のシビアな歴史があります。
トルコアイスの本場における歴史は300年以上前、オスマン帝国時代にカフラマンマラシュ地域で発祥したと伝えられています。もともと冬場の温かい飲み物だったサーレップが、山岳部の雪と結びついて冷たい菓子へと発展しました。しかし20世紀後半以降、世界的な需要増や国内消費の急増に伴い、原料となる自生ランの乱獲が深刻な生態系破壊を引き起こしました。
1キログラムの乾燥サーレップ粉末を採取するためには、約1,000本から4,000本もの野生ランの塊根を掘り起こす必要があります。人工栽培が極めて困難な種であることから個体数が激減し、トルコ政府は野生生物の絶滅を防ぐため、純粋なサーレップ粉末の国外輸出を法律で厳格に禁止する措置を取りました。
現在、日本国内の本格的なトルコ料理店やイベント屋台で提供されているアイスは、トルコ政府の管理下で正規に調合・加工された「輸出認可済みのドンドゥルマベース(混合粉末)」を輸入して製造されているか、あるいは熟練のシェフが日本国内の認可原料を配合して再現しているのが実情です。完全な野放しの野生ラン粉末ではないものの、伝統の配合比率を守った本物の食感は今なお受け継がれています。