ネット上のマタニティ情報にはびこる最大の盲点、それは「カロリーや糖類がゼロであれば、妊娠中でもいくら食べても太らず安全」という短絡的な言説である。
体重管理に苦しむ妊娠中期・後期において、ゼロカロリーゼリーやノンシュガー炭酸飲料は救世主のように思えるかもしれない。だが、ここに潜む代謝のメカニズムを看過してはならない。人工甘味料を舌が感知すると、脳は「大量の糖が入ってきた」と錯覚し、消化管と膵臓にシグナルを送る。しかし実際には血糖が上昇しないため、脳の報酬系は満たされず、結果として後から本物の糖質を強烈に渇望する過食ループに陥るケースが多発している。
また、妊娠糖尿病予防のお菓子として人工甘味料を過信した結果、甘味に対する味覚の閾値(慣れ)が上がり、正常な薄味の食事を楽しめなくなるという弊害も報告されている。妊娠期に整えるべきは一時的な数値の誤魔化しではなく、胎児の生涯にわたる味覚形成の基礎である。
もう一つの盲点が、伝統的な駄菓子の「塩分濃度」だ。つわりの吐き気止めとして愛好される酢こんぶ、梅加工品、スモモ漬けといった駄菓子は、砂糖こそ少ないものの強烈な塩分を含んでいる。1袋を完食しただけで、妊婦の1日の目標食塩摂取量(6.5g未満)の3分の1から半分を消費してしまう計算だ。「甘いお菓子は控えているから」と安心し、酸っぱい駄菓子でむくみと血圧急上昇を招いては本末転倒である。