過去に東京・原宿や恵比寿などで突如開催されてきたインアウトバーガーのポップアップストア。事前の大規模な広告宣伝は一切打たれず、開催前日や当日にSNS上で情報がリークされるやいなや、オープン前から数百人規模の行列が発生して整理券は即配布終了。わずか数時間で300〜500食程度を売り切って即日撤退するという、極めて異例のゲリラ的運営が繰り返されてきました。
一般のファンやネット上では「いよいよ本格的な日本進出に向けたテストマーケティングではないか」と期待の声が上がりがちですが、知的財産管理の専門家や外食産業のアナリストの見解はまったく異なります。この神出鬼没なイベントの核心は、ビジネスの市場調査ではなくIn-N-Out Burgerの商標維持の真相に直結しています。
日本の商標法第50条には「不使用取消審判」の規定が存在します。日本国内で商標登録を行っていても、継続して3年以上日本国内でその登録商標が指定商品・役務に使用されていない場合、利害関係人からの請求によって商標登録が取り消されてしまうリスクを抱えることになります。世界的な知名度を誇るブランドであっても、日本市場で一切の商業活動を行っていなければ、第三者に商標を奪われる危険に晒されるわけです。
わずか1日、数時間の限定イベントであっても、日本国内で実店舗を構え、ロゴ入りの看板を掲げ、登録商標を付したレシートを発行してハンバーガーやグッズを実際に販売すれば、日本の特許庁に対して「正当な商標の使用実績」を明確に示す公的証拠が完成します。つまり、あの熱狂的なポップアップストアは、日本のファンに対するサービス精神以上に、ブランドの権利を日本国内で防衛し続けるための冷徹な知財防衛オペレーションという側面が極めて強いのです。