シスコンとは「シスターコンプレックス(sister complex)」の略称であり、自らの姉や妹に対して過剰な愛着、執着、あるいは独占欲を抱く心理状態や、そうした行動をとる人物を指す和製英語です。心理学の祖であるカール・ユングらが提唱した概念ではなく、日本独自に派生した俗語ですが、精神分析学における近親者への固着や依存関係を説明する言葉として広く定着しました。
日常会話では「妹を可愛がる良き兄」というポジティブなニュアンスで使われることもありますが、人間関係の臨床現場やカウンセリングの場において、シスターコンプレックスの心理はしばしば「他者との精神的境界線(バウンダリー)の機能不全」として扱われます。姉妹を自立した一個の人格として尊重するのではなく、自分の支配下にある存在、あるいは自分を無条件に肯定してくれる都合の良い拠り所として捉えているケースが少なくありません。
類似の言葉に「ブラコン(ブラザーコンプレックス)」がありますが、両者の間には心理的ダイナミクスの明確な差異が見られます。シスコンとブラコンの違いを読み解くと、伝統的なジェンダー観や家庭内の役割期待が色濃く反映されていることが分かります。
シスコンの多くは男性から姉妹へ向けられる傾向が強く、そこには「自分が庇護しなければならない」「外の危険から守らなければならない」という過剰な庇護欲や、父親代わりを気取るコントロール欲求が混ざり合います。一方、ブラコンは兄弟に対する「崇拝」「憧れ」「依存」の感情が主軸となる場合が多く、相手を自分より上位に置く傾向が目立ちます。シスコン男性の心理の深層には、「無力な存在を守る頼もしい自分」という自己陶酔が潜んでいる点が極めて特徴的です。