膠原病という概念は、1942年にアメリカの病理学者ポール・クレンペラーが提唱した「コラーゲン病(Collagen disease)」に端を発します。人間の体を構成する細胞と細胞をつなぐ「コラーゲン(膠原線維)」や結合組織に広範な炎症が起こることからこの名が付けられました。
本来であれば細菌やウイルスといった外敵を排除するはずの「免疫システム」が何らかの異常によって暴走し、自分自身の正常な細胞や組織を「異物」と誤認して攻撃してしまう状態、すなわち自己免疫疾患が膠原病の本質です。
膠原病の枠組みには複数の疾患が含まれます。日本国内で最も患者数が多いとされる関節リウマチとの違いを理解することは、病態の把握において極めて重要です。関節リウマチが主に関節滑膜に病変が集中するのに対し、広義の膠原病である全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎などは、関節だけでなく皮膚、腎臓、肺、神経系、涙腺・唾液腺など、全身の臓器に多角的な炎症を引き起こします。
「膠原病は絶対に治らないのか?」という切実な疑問に対し、現代医学の現場からは「完治(根治)は困難だが、寛解を維持して通常通りの生活を送ることは十分に可能」という明確な答えが出されています。医学用語における「完治」とは、体質そのものが元に戻り薬を一切飲まなくても再発しない状態を指します。免疫の設計図そのものを書き換える技術が確立していない以上、完全な治癒を断言することはできません。しかし、適切な免疫抑制療法によって炎症を鎮静化させ、病気のない人と変わらない社会生活を送る「臨床的寛解」を達成できる確率は年々向上しています。