多くの人が陥りがちな最大の盲点は、「何らかのアクションを起こして相手を元気づけなければならない」という強迫観念です。インターネット上のQ&Aサイトでは「流産した友人にすぐ会いに行くべきか」「電話をかけて励ますべきか」という相談が後を絶ちませんが、流産直後の数日間から数週間において、積極的なコンタクトは逆効果になるケースが圧倒的多数を占めます。
流産後の女性の体内では、急激な女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の激減が起こっています。これは医学的に、一般的な出産直後の産褥期と全く同じメカニズムであり、精神的に極めて不安定になりやすく、重度の産後うつを発症するリスクと隣り合わせの状態です。加えて、子宮収縮に伴う後陣痛や出血、子宮内容除去手術による全身麻酔の副作用など、身体的ダメージは極めて過酷です。
このような極限状態において、「自宅へ突然訪問する」「長電話をかける」といった行為は、相手に身だしなみを整えさせ、気を遣わせるという過大な負担を課すことになります。また、「何かあったら言ってね」という言葉すら、当事者にとっては「何をお願いすればいいかわからない」「迷惑をかけられない」という思考の負担になり得ます。あえて距離を保ち、静寂と休息の時間をプレゼントすることこそが、高度な配慮なのです。