臨床の現場において、採血を担当する看護師は視覚だけでなく、指先の触覚を研ぎ澄ませて血管を探しています。「太い血管が見えている人」よりも、実は「目には見えないけれど触るとしっかりと弾力がある血管」のほうが針を確実に通しやすいとされています。しかし、皮下脂肪が厚いとこの指先に伝わる特有のゴムのような跳ね返りが極めて感知しづらくなります。
さらに、脂肪層の中にある静脈は周囲を固定する組織が柔らかいため、針先が触れた瞬間にツルリと横へ逃げてしまう「逃げ血管」になりやすい特徴があります。針を刺したものの狙いがわずかに逸れてしまったり、血管壁を突き破って内出血を起こしたりする失敗は、こうした物理的な難しさが引き金です。
加えて、体格に対して生まれつき血管そのものが細い人や、脱水気味で血管がペタンコにしぼんでいるケースも重なると、難易度は跳ね上がります。「何度も刺し直して痛い思いをさせたらどうしよう」というプレッシャーは看護師側にも重くのしかかっており、お互いにとって精神的負担の大きい時間となってしまうのが実情です。