うがい薬といえば、茶褐色の「イソジン(一般名:ポビドンヨード)」を思い浮かべる方が依然として多いのが実情です。しかし、臨床現場において医師や薬剤師は、両者を全く異なるカテゴリーの薬剤として明確に使い分けています。最大の違いは、薬効が「殺菌消毒」なのか「抗炎症(組織修復)」なのかという点です。
ポビドンヨードは極めて強力な殺菌・抗ウイルススペクトラムを持ち、接触した病原体を物理化学的に破壊します。手術前の皮膚消毒や院内感染対策に用いられるほど強力な反面、健康な常在菌叢を無差別に死滅させ、傷ついた口腔粘膜に激しい刺激を与えてしまう弱点があります。過去の臨床研究でも、水だけによる日常的なうがいに比べ、過度なポビドンヨードうがいは正常粘膜を傷害して風邪の発症率を高めてしまう可能性が指摘されたほどです。
一方のアズノールは、細菌を直接殺す力は持ち合わせていません。その代わり、すでに侵入したウイルスや細菌によって引き起こされた「火事(炎症)」を直接消火し、ただれた粘膜の修復を促します。したがって、「喉が焼けるように痛い」「口内炎が染みて食事がとれない」という炎症ピーク時にポビドンヨードを使うと、傷口に塩を塗るような激痛を伴い治癒を遅らせる恐れがあるため、アズノールを選択するのが医学的な王道です。