若い頃に松竹の映画でキャリアをスタートさせた彼は、やがて繊細な青年の役から、重厚な時代劇の殺陣、そして都市型の洗練された刑事ドラマに至るまで、幅広いジャンルで唯一無二の存在感を発揮しました。
どんな役柄を演じても「田村正和」という独特の美学が損なわれることはありませんでした。役者として常に一線を画し、安易にプライベートを切り売りしなかったからこそ、視聴者は彼の演じるキャラクターに100%没入することができたのです。セリフ一つ、手振り一つに宿る美意識は、徹底した自己管理と家族の支えがあってこそ成り立っていたプロフェッショナリズムの結晶でした。