「ベースのカットラインは綺麗なのに、最後のスタイリングだけがどうしてもダサい」という現象は、決して珍しいことではありません。カットは上手いのにセットが下手な美容師が生まれる背景には、美容業界の教育システムとサロンワークの構造的な課題が存在します。
美容師の技術習得プロセスにおいて、アシスタント期間の大半はシャンプー、カラー塗布、ブロー、そして骨格に合わせたカット理論の反復練習に費やされます。一方で、トレンドを押さえた「コテ巻き」「アイロン操作」「ワックスやオイルの繊細な毛束感作り」といったスタイリング技術は、個人のセンスや自己鍛錬に委ねられる傾向が根強く残っています。そのため、理論通りの正確なカットはできても、現代的な抜け感やニュアンスを具現化するセット力が追いついていないケースが発生します。
さらに、ヘアアイロンやブローの仕上がりに納得いかない原因として見逃せないのが、「美容師側の過剰なサービス精神」と「映え意識」です。プロは代金をいただく施術の締めくくりとして、「いつもと違う特別感」を演出するためにアイロンでしっかり巻き込んだり、ボリュームを過度に出したりしがちです。しかし、日常的にナチュラルなスタイリングを好む顧客から見れば、その気合の入った作り込みこそが「古臭い」「派手すぎて違和感がある」と受け止められる決定打となってしまいます。