一般的なスポーツマンガや王道の成長物語であれば、登場人物の葛藤はドラマチックかつ美しく昇華されることが多い。しかし『3月のライオン』が提示するのは、綺麗事では片付けられない人間の醜悪さやドロドロとした本音そのものだ。
桐山零が抱える根深い孤独感や強烈な自己否定、そして盤上で打ちのめされたプロ棋士たちの惨めな焦燥感。それらが抽象的な詩的表現と、鋭い刃物のような現実的リアリティの両面から叩きつけられる。画面や紙面越しにキャラクターの息苦しさがダイレクトに伝わってくるため、感受性の高い読者ほど胸が締め付けられ、「重すぎる」「見ていて気持ち悪い」と身体的な不快感に似た反応を示してしまうのだ。