周富徳氏が光り輝く看板として赤坂璃宮の認知度を牽引した一方で、厨房の基礎を築き、最高峰の味を揺るぎないものにした真の立役者が、赤坂璃宮オーナー譚彦彬氏でした。譚氏は京王プラザホテル南園時代から周氏と苦楽を共にした無二の盟友であり、広東料理界で「素材の味を極限まで引き出す達人」として畏敬の念を集めた名料理人です。赤坂璃宮の創業にあたり、周氏を総料理長に担ぎ出す一方で、実質的な厨房統括とレシピ管理、経営基盤の構築を一手に引き受けていました。
周氏の退任後、譚彦彬氏が正式に総料理長を兼任し、名実ともに赤坂璃宮の最高指導者となります。赤坂離宮の歴代総料理長の系譜を検証すると、周富徳氏(初代)による爆発的な創業期、譚彦彬氏(二代目・副会長兼総料理長)による本物志向の深化期、そして現在譚氏の志を継ぐ譚澤明氏(現代表・総料理長)による継承と進化の時代へと、見事なバトンタッチが行われてきたことが分かります。
歴代の総料理長たちが守り続けてきた赤坂璃宮の中華料理メニューの真髄は、「医食同源」に根ざした優しく滋味深い味わいです。豚骨や老鶏からじっくりと旨味を抽出した澄み切った上湯(シャンタン)スープ、特注の焼き窯で香ばしく焼き上げる名物の釜焼き叉焼(チャーシュー)、フカヒレの姿煮、そして季節の厳選海鮮炒めなど、油分を極力控え素材本来の輪郭を際立たせる手法は、現在も日本の中国料理界における最高峰の基準であり続けています。