走り高跳びの歴史を語る上で欠かせないのが、1968年メキシコ五輪でディック・フォスベリーが披露した「背面跳び(フォスベリー・フロップ)」の誕生です。それまでの主流だったベリーロール(腹ばい跳び)や正面跳びを過去のものにし、跳躍競技のパラダイムシフトを起こしました。
背面跳びが物理学的に優れている最大の理由は、「身体の重心位置をバーより低い位置に保ったままバーを越えられる」という点にあります。
アーチ状に背中を反らせて頭、肩、腰、足と順番にバーを通過させることで、瞬間ごとの人体の重心(質量中心)はバーの数センチ下を通過します。つまり、選手は自らの重心をバーの高さまで持ち上げる筋力を使わずに、より高いバーをクリアできるのです。現在のトップ選手たちは、この重心コントロールをミリ単位で最適化し、自らの跳躍可能高さを極限まで引き出しています。