南花巻温泉郷の奥深くに位置するこの場所は、まさに東北を代表する秘湯として知られている。少年時代の宮沢賢治が水泳の練習のために訪れたという逸話は有名で、名作『銀河鉄道の夜』の情景に想いを馳せる文学ファンも少なくない。また、太平洋戦争末期に近くの太田村へ疎開していた高村光太郎もまた、このお湯と風景を心から愛したひとりだ。
川沿いに佇む古い木造建築群は、まるで昭和初期や大正時代へタイムスリップしたかのような錯覚を抱かせる。長い歴史の中で、全国の湯治客が身体を休め、語り合ってきた湯治場の文化が、今もなお色濃く受け継がれている。どこか懐かしく、そして温かい空気が漂う空間だ。