彼女のキャリアを語る上で決して外すことができない代表作といえば、フィンランドのヘルシンキを舞台に描かれた映画『かもめ食堂』だ。荻上直子監督が紡ぎ出す独特の静けさと温もりのある世界観の中で、不条理でありながら愛おしいキャラクターを見事に熱演。あの作品で見せた存在感は、国内にとどまらず海外の映画ファンにも強烈な記憶を残した。
荻上直子監督との関係は、単なる監督と出演者という枠組みを超えている。言葉に頼りすぎず、佇まいや視線の揺らぎによって登場人物の背景を雄弁に語る表現力。人間の可笑しさと切なさを同時に表現できる彼女のセンスは、作品に深みをもたらす重要な鍵となっている。