膀胱炎の典型的な兆候は、排尿時の鋭い痛みや残尿感、頻尿、尿の濁りといった下腹部・骨盤周辺の局所トラブルです。本来、感染が膀胱粘膜の表層に留まっている段階では、解剖学的に離れた腰や背中へ強い痛みが波及することはほとんどありません。
では、なぜ膀胱炎の発症前後に腰痛が生じるのでしょうか。その主因は、尿道から侵入した大腸菌などの病原細菌が膀胱内で増殖し、さらに上流の尿管を遡って腎臓内部の「腎盂(じんう)」や腎実質にまで感染を拡大させる「上行性尿路感染(じょうこうせいにょうろかんせん)」にあります。
腎臓は腰のやや上、背骨を挟んだ左右の背中側に位置しています。細菌が腎盂に到達して炎症を起こすと、腎臓を包む被膜が内圧の上昇によって伸展し、腰から背部、脇腹にかけて強い鈍痛や圧迫感を引き起こします。つまり、膀胱炎に引き続いて現れる腰痛は、単なる筋肉のコリや関連痛ではなく、炎症が下部尿路(膀胱)から上部尿路(腎臓)へと突破された証拠なのです。