少年隊の伝説的デビュー曲「仮面舞踏会」が今なお語り継がれる理由とは何でしょうか。その最大の要因は、楽曲の緻密な構造美と、1985年当時の常識では考えられなかった実験的なリリース形態にあります。シングル発売時、所属レコード会社のワーナー・パイオニアは、ジャケットデザインだけでなく「間奏のセリフ」と「B面収録曲」が異なる3種類のレコードを同時リリースするという前代未聞の戦略を打ち出しました。
当時、シングル曲の複数バージョン展開は極めて異例でした。作詞を担当したちあき哲也氏と、日本歌謡界の巨匠である作曲家・筒美京平氏は、間奏に差し込まれるフレーズに3通りの異なる世界観を用意しました。ファンは自分のお気に入りのフレーズやカップリング曲を求め、レコード店に殺到することになります。
テレビ番組や音楽賞のステージで披露される際は、基本的にTYPE Aのフレーズが採用されるケースが大半でしたが、コンサートや特別番組では異なるバージョンが突如披露され、視聴者やファンを熱狂させました。単なる楽曲の良し悪しを超え、「集める楽しみ」「発見する歓び」をパッケージに付加したこの試みは、メディアミックス戦略の先駆的事例としても高く評価されています。