1994年春、テレビ界に激震が走った。長年、日本放送協会(NHK)のスポーツ中継や大型番組で安定感抜群の語りを見せていた大塚範一氏がフリーに転身。直後に株式会社フジテレビジョンの新番組『めざましテレビ』のメインキャスターに抜擢されたのだ。
当時、朝の枠で民放他社に押されていたフジテレビにとって、この人事は乾坤一擲の賭けだった。「固いNHK出身者に朝の明るいポップな番組が務まるのか」という懐疑的な声が業界内外に渦巻いていたのも事実だ。しかし、制作スタッフが彼に託したのは、単なる原稿読みではなく「生きた言葉で視聴者に寄り添うコメンテーター」としての役割だった。
スタッフとの最初の顔合わせで、大塚氏は笑いながらこう語ったという。「ニュースを難しく解説する時代は終わった。食卓で家族と一緒に笑える朝を作ろう」。この決意が、伝説の始まりとなった。