身近なデザインの中に刻まれたローマ字表記を確かめると、興味深い事実が浮かび上がる。私たちが日常的に手にする日本銀行券、つまり紙幣の裏面下部に印刷されている英字は「NIPPON GINKO」だ。また、日本郵便が発行する普通切手に印刷された国名表記も「NIPPON」で統一されている。
一方、国際的な身分証明書であるパスポートの表紙には英語表記の「JAPAN」が記され、内部のローマ字氏名などにはヘボン式表記が用いられる。明治期に近代国家としてのインフラを整備する際、海外に向けた公式な発信や印刷物において「NIPPON」という力強い音節が好んで採用された名残が、現在の紙幣や切手のデザインにそのまま受け継がれているのだ。