大手ロードサービス隊員やディーラー整備士へのヒアリング、およびSNSや自動車コミュニティに寄せられる実際の救援トラブル事例を精査すると、近年特に目立つのが「ハイブリッド車(HV)に関わる接続ミス」です。
トヨタのプリウスやアクア、ホンダのe:HEVをはじめとするハイブリッド車、あるいはプラグインハイブリッド車(PHEV)には、駆動用の高電圧バッテリー(200V〜600V超)とは別に、ハイブリッドシステムを起動するための「12V補機バッテリー」が搭載されています。この補機バッテリーが上がった場合、他車から電気を供給してもらってシステムを再始動させることは可能です。エンジンルーム内のヒューズボックス内に設けられた「救援用プラス端子(専用の赤いカバーがある端子)」を使用するのが標準的な手順です。
しかし、絶対にやってはならないのがハイブリッド車を救援車(ドナー)にしてガソリン車を助ける行為です。主要メーカーの公式車両取扱説明書にも「他車の救援には使用できません」と明確に記載されています。ハイブリッド車の補機系統には大電流を発電・供給する大容量オルタネーターが備わっておらず、ガソリン車の大型セルモーターを力づくで回そうとすると、瞬間的に300〜500アンペアという規格外の過大電流がハイブリッド車のDC-DCコンバーターやインバーター回路へ逆流します。その結果、救援側ハイブリッド車の電源制御ユニットが即座に焼き付き、修理代数十万円の自走不能状態に陥ります。「親切心でガソリン車を助けようとしたハイブリッド車のオーナーが、自らの愛車を大破させてしまった」という悲痛な声は、現場のメカニックの間でも頻繁に共有される実態です。
また、接続作業を行う前に見落としてはならないのがバッテリー端子の腐食確認と安全対策です。バッテリーのターミナル周辺に粉を吹いたような「白や青緑色の粉」が付着している光景を見たことがある方も多いでしょう。この粉の正体は、端子の鉛と電解液から漏れた希硫酸ガスが反応して生成された硫酸鉛です。この粉が付着したままケーブルを繋いでも電気抵抗が大きすぎて十分な電流が流れず、エンジンがかからないばかりか、接触部で異常発熱を起こす危険があります。作業前には必ず厚手のゴム手袋と保護メガネを着用し、乾いた布やワイヤーブラシで粉を丁寧に除去し、端子の金属面を露出させてから接続してください。希硫酸の結晶は皮膚や目に対して強烈な刺激性を持つため、素手で触れる行為は厳禁です。