一般のディーラーで購入した車両が、そのまま要人警護の現場に投入されることはない。日本の自動車・特殊車両産業における専門エンジニアたちの手によって、徹底的な解体と再構築が行われる。防弾仕様車へと変貌を遂げるプロセスは、まさに精密工学の極致といえる。
ドアパネルの内部には軽量かつ高密度なアラミド繊維やスチール装甲が敷き詰められ、底面には地雷や手榴弾の爆風を外側へ逃がす特殊V字構造のアンダーボディシールドが補強される。燃料タンクの引火防止処理や、車外からのガス攻撃に備えたろ過式空気循環システムなど、現代の特殊車両産業が誇る防衛技術が惜しみなく投入されている。目に見える豪華さの裏側に、生存率を極限まで高めるための技術的工夫がミリ単位で詰まっているのだ。