スコッチウイスキーを語る上で欠かせないのが、一度嗅いだら忘れられない「ピート香(スモーキーフレーバー)」の存在です。「正露丸」「ヨードチンキ」「燻製」「焚き火」と多様な言葉で形容されるこのアロマは、原料である大麦麦芽(モルト)の製麦工程で意図的に付着させています。
発芽させた大麦の成長を止めるため、熱風で乾燥させる際、スコットランドの湿原で数千年の歳月をかけて植物が堆積・炭化した「泥炭(ピート)」を燃料として燻します。この煙に含まれるフェノール化合物が麦芽に深く浸透し、蒸留・樽熟成を経てもなお鮮烈な個性として原酒に残る仕組みです。
もちろん、すべてのスコッチが煙たいわけではありません。ピートを一切使わずに熱風のみで乾燥させるノンピート製法や、軽やかに燻すライトピート製法など、焚き込みの度合い(ppm値)によって香りの強弱は緻密にコントロールされています。さらに、オーク樽での長期間におよぶ樽熟成によって、バニラやドライフルーツのような甘やかな香味成分が重なり合い、スコッチならではの奥深いハーモニーが完成します。