現在私たちが手軽にこの伝統の味を楽しめる背景には、地域の味を守り継ごうと立ち上がった地元有志の汗と涙のドラマが存在します。かつて吉野地区では、親戚が集まる冠婚葬祭や農作業の節目に各家庭で鶏をつぶし、鶏めしを炊いて振る舞う風習がありました。
しかし時代の移り変わりとともに手作りの機会が減少。伝統の味が途絶えてしまうことに強い危機感を抱いた地元の主婦たちが1988年(昭和63年)に結成したのが「吉野鶏めし保存会」です。保存会のメンバーは地域のお年寄りから昔ながらの味付けや調理法を丹念に聞き書きし、幾度もの試行錯誤を重ねて門外不出の伝統比率を確立しました。
直売所での販売から始まった活動は口コミで評判を呼び、現在では百貨店の物産展やアンテナショップ、さらには冷凍通販へと拡大。地域コミュニティの誇りと家庭のぬくもりをそのまま詰め込んだパッケージは、大分を代表する食文化遺産として確固たる地位を築いています。