グリスアップを長期間行わないまま機材を使い続けると、内部で何が起きるのでしょうか。機械が受ける物理的なダメージのプロセスは極めて深刻です。
充填されたグリスは、大気中の酸素による酸化、摩擦熱による劣化、外部からの微小なチリの混入、遠心力による流出などにより、徐々に「油分抜け」を起こします。油分を失ったグリスは固化してカサカサのカス状になり、潤滑機能を完全に失います。
その結果、金属同士が直接触れ合う「ドライ摩擦」が発生します。最初は微小な異音(シャー、キュルキュルといった高音)から始まりますが、摩擦熱が数百℃に達すると金属表面同士が瞬間的に溶着し、剥離を繰り返す「かじり」や「ピッチング(表面の虫食い状の損耗)」が発生します。最終的には部品同士が完全に癒着してロックする「焼き付き」を引き起こし、破断した金属粉が周囲の機構を巻き込んで全損事故につながるのです。
定期的に適切なグリスを補給することで得られるグリスアップ効果は、単に動きをスムーズにするだけではありません。部品の寿命を2〜3倍以上に延ばし、数十万円規模の交換修理費用を未然に防ぐ、極めて費用対効果の高い予防保全策となります。