現代の就労移行支援施設や医療現場、そしてSNS(Xや発信系コミュニティ)では、この「偉人神話」に対して複雑な感情を吐露する声が後を絶ちません。現場を取材すると、メディアが描く「天才像」と「生活のリアル」の間にある大きな断絶が浮き彫りになります。
大手IT企業でエンジニアとして勤務しながら成人期にADHDと診断された30代男性は、自らの葛藤を次のように語ります。
「ネットで『ジョブズもエジソンもADHD』という記事を見るたび、正直惨めな気持ちになりました。私にあるのは、朝起きられないだらしなさ、書類の提出期限を守れない欠陥、衝動買いで底をつく貯金だけです。偉人たちのような突出したひらめきなんてない。『天才じゃない側のADHD』はどう生きればいいのか、長い間絶望していました」
また、発達障害者の就労支援を行う現場の専門職からは、以下のような指摘がなされています。
「エジソンが成功したのは、妻や母が生活全般を完全にバックアップし、発明品の事業化には卓越した財務・営業パートナーが存在したからです。坂本龍馬にも勝海舟や西郷隆盛という理解者がいました。偉人の物語から学ぶべきは『個人の才能』ではなく、『弱点を誰が、どのようにカバーする体制を作っていたか』というチームビルディングの視点です」