後世のメディアにおいて頻繁に見られる誤謬が、「名古屋巻き=ギャルの派手髪」という短絡的なカテゴリー分けです。これは2000年代半ば以降に登場した『小悪魔ageha』的な「盛り髪」や「スジ盛り」の記憶が、後の世代の頭の中で無秩序に混ざり合ってしまったことに起因します。
名古屋巻きの根底にあったのは、ギャルカルチャーのような社会への反抗やアウトサイダーの自己表現ではありません。むしろ正反対の、「伝統的な良家のお嬢様が親世代のコンサバティブな価値観を肯定し、現代的な華麗さへと昇華させた礼装美」でした。
彼女たちの肌は透き通るような美白であり、メイクも上品なブラウン系やピンク系が基調でした。露出度の高い服装や日焼け肌を好んだギャルとは一線を画し、良識ある家庭環境に裏打ちされた「お行儀の良さ」と「圧倒的な華やかさ」が共存していた点に、名古屋巻きの唯一無二のオリジナリティがあったのです。この盲点を見落として単なる派手髪として片付けてしまうと、2000年代初頭の女性消費カルチャーの力学を見誤ることになります。