ネット上の自動車コミュニティでは時折、「8人乗りのほうが定員が多いのだから、迷ったら8人乗りを買っておけば損をしない」というアドバイスが見受けられます。しかし、これは現代の車社会における最大の誤解です。現場取材で判明した、8人乗り車を選んで後悔する共通点には、購入前のシミュレーション不足から生じる3つの典型的な盲点があります。
一つ目は「大人8人は物理的に乗れない」という錯覚です。日本の道路運送車両法において、乗車定員は「大人1人=55kg、座席幅380mm以上」という半世紀以上前の基準をベースに算出されています。しかし、現代人の体格向上に加え、真冬の厚着や荷物の持ち込みを考慮すると、横幅1,400mm前後の2列目・3列目ベンチシートに成人男性が3人並んで肩をすぼめずに座り続けることは困難を極めます。ネットで散見される「8人乗りだから大人8人で旅行へ行く」という想定は、実際には修行のような苦痛を同乗者に強いる結果となります。
二つ目は、高速道路料金やパーキングでの降車ストレスです。8人乗りは2列目が横一列に塞がっているため、3列目に座った乗員が外に出るためには、必ず2列目の乗員に立ち上がってもらい、シートを跳ね上げる必要があります。高速道路のサービスエリアで「ちょっとトイレに行きたい」というだけの状況でも、車内全員が動かなければならない連鎖ストレスは、長距離旅行の空気を確実に険悪にさせます。
三つ目は、リセールバリューの構造的な下落圧力です。以前は「8人乗り=輸出需要が高い」と言われた時代もありましたが、現在の東南アジアや中東における日本車輸出市場では、VIP送迎需要や富裕層ファミリーの需要が主流となっており、プレステージ性の高い7人乗りキャプテンシートが圧倒的に高額で取引されています。国内市場でも中古車を求める一般ユーザーの圧倒的多数がキャプテンシートを指名買いするため、買取相場において8人乗りは7人乗りに対して15万〜30万円ほど査定が低くなる傾向が定着しています。