映画デビュー後、徐々に知名度を上げていたジョニーの運命を決定づけたのが、1987年から放送された米FOXの青春刑事ドラマ『21ジャンプストリート』です。高校生に見える若手潜入捜査官トム・ハンソン役を演じたことで、全米中のティーンから熱狂的な支持を集め、瞬く間に全米トップのティーンアイドルへと祭り上げられました。
当時の報道各社の取材データによると、番組開始からわずか数か月で彼の元には毎週1万通を超えるファンレターが殺到。街に出れば悲鳴とともに群衆に取り囲まれる生活が始まりました。しかし、この爆発的ヒットは彼自身にとって深い精神的苦痛の始まりでもありました。当時の特番インタビューや手記において、ジョニーは次のような生の告白を残しています。
「朝起きると、自分が缶詰のスープかシリアルの箱のように商品化されているのを感じた。他人が作り上げた『お利口なポスターボーイ』の仮面を剥ぎ取りたくて仕方がなかった」
作られたパブリックイメージを粉砕するため、彼は契約に縛られながらも果敢に行動を起こします。ジョン・ウォーターズ監督の悪趣味カルトパロディ『クライ・ベイビー』(1990年)で自らのアイドル像を自虐的にパロディ化し、さらに同年に運命の盟友となるティム・バートン監督と出会いました。
その出逢いが結実したのが、不朽の名作『シザーハンズ』(1990年公開)です。両手がハサミの人造人間エドワードという、素顔を白塗りメイクと傷跡で覆い隠した異形のキャラクター。大手スタジオから提示されていた莫大なギャラの青春映画オファーをすべて蹴り、セリフ数がわずか150語足らずの孤独な怪物を演じる決断を下した当時の判断こそ、俳優ジョニー・デップの美学が確立された決定的瞬間でした。その瞳だけで純真無垢な悲哀を表現しきった演技は世界中から絶賛され、名実ともに「実力派アートハウス俳優」への脱皮を果たしたのです。