地域を問わず、赤ちゃんのつむじが2つあると「この子は天才になる」「将来やんちゃで親の手を焼かせる」といった極端な二者択一の言い伝えが語り継がれてきました。なぜこれほど正反対の噂が定着したのでしょうか。
まず「天才説」の背景には、際立った才能を発揮した歴史的偉人やトップアスリートの中に、つむじが2つある人物が実在した事実が関係しています。野球界のスーパースターであるイチロー氏や、漫画の神様と称された手塚治虫氏、お笑い界の鬼才・太田光氏など、常人離れした集中力と独自の発想力を持つ著名人が「ふたつむじ」であることを公言またはメディアで報じられたことで、「つむじ2つ=天才の証」というポジティブなイメージが社会的に強化されました。
一方、日本各地に根強く残るのが「やんちゃ・きかん坊の迷信」です。関西地方では「つむじ曲がり(へそ曲がり)」という言葉の連想から、頑固で自己主張が激しい気質を結びつけられることが多く、沖縄地方では「ふたつむじ(ターチマーチュー)」と呼ばれ、「気性が荒く活発で、大物になる反面、親をてこずらせる暴れん坊」という共通認識が存在します。
民俗学的な見地から分析すると、頭頂部の2つの渦巻きから立ち上がる髪の毛が、まるで「鬼の角(ツノ)」のように見えたことから、昔の人々が「疳の虫(かんのむし)が強い」「エネルギーが有り余っている」と解釈したことが発端とされています。医学的な見地から言えば、つむじの数と個人の知能指数(IQ)や気質・性格の間に科学的な相関関係は一切存在しません。希少な身体的特徴に対し、昔の人々が将来への期待や警戒を込めて名付けた民俗伝承に過ぎないのです。