制作初期のプロットにおいて、エルサ(Elsa)は完全な悪役として設計されていた。青い肌に冷徹な心を持つ雪の女王。村を氷漬けにして嗤うヴィラン。そんな当初の青写真を完全に覆したのが、作詞・作曲を手掛けたクリステン・アンダーソン=ロペス(Kristen Anderson-Lopez)とロバート・ロペス(Robert Lopez)夫妻による楽曲の提出だった。
ブルックリンの公園を散歩しながら、二人は「もし自分が恐ろしい秘密を何年も隠し続け、それがついに露見してしまったらどう感じるか」を突き詰めたという。湧き上がったのは悪意ではない。圧倒的な解放感と、剥き出しの孤独だ。
提出されたデモ音源を聴いた制作陣は戦慄した。この力強いバラードを歌う人物を悪者にしておくことなど不可能だと悟ったからだ。楽曲の持つエモーショナルな熱量に合わせ、脚本そのものが根本から書き直された。『レット・イット・ゴー(Let It Go)』は単なる挿入歌ではなく、物語そのものの魂を生み出した稀有な楽曲なのである。