文部科学省の指導要領に準拠した中学校国語の授業や、日本語教育能力検定試験の対策現場を取材すると、学習者が必ず引っかかる「3大トラップ」が浮かび上がってきます。
都内の進学塾で国語科指導を担当するベテラン講師は次のように実情を吐露します。
「生徒が最も混乱するのは、動詞『行く』の例外処理です。『行く』はカ行五段活用なので、ルール通りならイ音便で『行いた(いいた)』になるはず。しかし実際は『行った(いった)』と促音便化します。これを例外として覚えておかないと、高校入試の文法問題で手痛い失点につながります」
また、日本語学校の教壇に立つ日本語教師からは、外国人学習者特有の悩みも聞かれます。
「外国人にとって『て形』の習得は最初の大きな壁です。規則的な活用変化ではなく、音が耳障りでないように変化するという歴史的理由を伝えないと、『なぜカ行とタ行で形が違うのか』という理不尽さにフラストレーションを抱えてしまいます」
そして第3の罠が、日常生活で使い古されている敬語表現の正体です。朝の挨拶「おはようございます」の「おはよう」は、形容詞「早い(はゆい)」の連用形「早く」がウ音便化して「は反应→はよう」へ転じたもの。感謝を伝える「ありがとうございます」も、「有り難い」の連用形「有り難く」がウ音便化した形(ありがたく→ありがとう)です。文法を知識の暗記としてではなく、日頃交わしている言葉の正体として捉え直すことで、現場の理解度は劇的に跳ね上がります。